ひろしまPステーションガイド

開局から経営不振・廃止までの経過
もともと、県域FM局の広島エフエム放送と、県域AM局のRCCラジオの2局が、圧倒的に支持されており、聴取率を激しく争っている状況が続いていた。それに加え、中区のコミュニティFM局であるFMちゅーピーも、FMななみの放送エリア全域をカバーした形で、すでに開局していたため、後発のFMななみにとって、その3局と競合せざるを得ない厳しい状況の中での開局であった。

そのため、佐伯区五日市限定のローカルFM局を前面に打ち出したものの、スポンサー獲得で開局当初から苦戦した。その要因として、佐伯区五日市地区(旧・佐伯郡五日市町)の特質がある。広島市のベットタウンとして人口も多く(かつての、日本一人口の多い町)、商店街・小型店を中心とした「商業」で大きく発展した街であるものの、有力な大企業がない(特に工業、製造、流通業)ために、大きなスポンサーを獲得できなかった点が大きい。また、五日市の住民に、FMななみが浸透しなかった面も、同じように大きい。

放送内容は、開局当初は、多くの自社制作の生ワイド番組で編成。特に平日は7:30〜19:00までを5つの生ワイド番組で編成しており、パーソナリティーも、広島の人気ローカルタレントやDJらを起用。完全24時間放送、ミュージックバードからの番組供給など、県域局に対抗するべく、積極的な番組編成だったが、逆にこの編成が、経営の負担になったことも否めない。番組編成の面でも、高校生や大学生をターゲットにした音楽生番組を平日夕方に編成したり、お笑いタレントの番組に積極的だったなど、若い人向けの放送局という方向性を向いていたこともあり、住民・リスナーとのニーズがあっていない部分も。

もう一つの要因として、「エフエムはつかいち」の開局が決まったことが挙げられる。隣接する廿日市市に、FMななみから、僅か4kmしか離れていない場所に局舎を構える、同じコミュニティFM局ということで、リスナーやスポンサー、地元廿日市・五日市に密着した放送内容といった、あらゆる点で、直接的に競合することが予想され、放送休止の決定的な要因になった。実際、FMななみは、エフエムはつかいち開局の3ヶ月前に放送休止し、開局した1ヶ月後に廃止となっている。

2007年7月、経営不振の為、FMななみのほとんどの自社製作番組が突然終了、多くのパーソナリティーが降板した。ただし、午前の3時間生ワイド番組「ななみレストラン」のみ、平日の生ワイド番組で唯一残ったものの、打ち切った他の生番組枠の穴埋めの為、「ななみレストラン」を午後に再放送したり、音楽のみのフィラー番組を放送することで、ミュージックバードの番組で編成する夜まで繋ぐなど、経営不振が番組編成に顕著に現れるようになった。

FMななみは、その4ヶ月後の2007年11月30日に放送を休止
総務省の発表記事
http://www.cbt.go.jp/hodo/2008/2007ho158-1.html

休止後も、放送再開への模索が続いたものの、3月26日、総務省に廃止届を提出し、受理され、3月31日付けで廃止・事実上閉局しました



他のコミュニティFM局との競合
FMななみの放送エリアであった、佐伯区五日市は、他に2つのコミュニティFM局(FMちゅーピー、エフエムはつかいち)も放送エリアとなっている、いわばコミュニティFM局の激戦区である。

広島都市圏最初のコミュニティFM局であるFMちゅーピー(中区)は、中国新聞の子会社であるため、中国新聞が、経営面で大きく支援をしている。(中国新聞には番組表や番組の広告が毎日掲載されている)また、J-WAVEの番組も供給されている点も人気を得ている。

エフエムはつかいちは、廿日市市と、災害時の24時間緊急放送の協定を結ぶことで、局の経営において廿日市市から支援を受けている。1日15時間のみの放送で、全ての番組が自社製作の生放送、パーソナリティーやレポーターも、局のスタッフや一般市民が担当するという徹底的な効率化と、ローカル色を前面に押し出した放送で、運営されている。

しかし、FMななみは、前述の2局のような、大企業や自治体からの支援が全くなく、経営基盤が非常に弱かったことも、経営面で厳しかった一つの理由となっている。

ちなみに、送信所の位置の関係でも、競合する他局と大きな差があった。 FMちゅーピーやエフエムはつかいちは、送信所を広島湾に面した山の山頂に設置したことで、電波を遮るものがないことが作用し、コミュニティFMであるにも関わらず、広島市中心部、広島湾沿岸エリアの全域、遠くは山口県岩国市など、広範囲で受信できることから、本来の放送区域エリア以外の聴取者をたくさん取り込めている。

一方、FMななみは、受信できる地域を佐伯区五日市・廿日市市西部と限定したことで、送信所を広島湾からは遠く離れた、比較的低い場所に設置した。そのため、前述の2局と同じ出力にも関わらず、五日市地区の周辺の山が障害になり、広島市中心部や廿日市市大野町以南などでは受信できず、結果的に、聴取者が佐伯区五日市と、西区・廿日市市・江田島市の一部に限られてしまい、放送区域エリア以外の聴取者を取り込めなかった



FMななみ、放送最後の日
2007年11月30日、唯一最後まで残った自社制作の生放送ワイド番組「ななみレストラン」には、休止を惜しむリスナーのメールやファックスが相次いだ。「放送は今日で一旦お休みしますが、必ず体制を立て直して、放送再開します。」という言葉をパーソナリティーが繰り返した。午後10時に停波し、そのまま放送再開されることなく、3年半の歴史にピリオドを打った。

休止直前に、エフエムななみが公式に出したコメントや、地元の新聞「西広島タイムス」のラジオ番組欄には、「放送再開に向け、これからも協議していく。FMななみの諸業務は、今後も通常通り行う」と明記されていたが、結局放送再開されることなく廃止となった。

ちなみに、エリア内の各所で配布されていた、フリーペーパー「クラブななみマガジン」は、2007年10月から12月までのタイムテーブルが掲載されていたことから、放送休止は、急遽決まったことが伺える


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